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東京高等裁判所 昭和34年(イ)23号 決定 1959年6月03日

少年 J(昭一八・一・一四生)

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告の要旨は、(一)自分は先生を脅したがそれは本心からではなく、従つて先生に対し悪意など全然なかつたのであり、現在先生に心配をかけたことについて後悔の気持で一杯であり、(二)家庭においても平和に生活して行けるという自信があり、自分を引き取つてくれる所もあり、(三)精神力や意思等の問題があつたとしても強制的に少年院に入れられる理由はないというのであるが、記録を精査すれば、少年は昭和三十三年三月二十五日東京都○○区立第○中学校を卒業後転々として就職先を変え同年八月頃から家出をして浮浪生活をしたこともあり、遂に中学校当時の恩師であるK等に対し無理をいつて脅迫する始末となつたこと、少年の父Lは職安人夫をしており、酒を好み、しかも酒癖が悪く少年との折合が悪く殴合の喧嘩をしたこともあり、少年の母M子は病弱であること及び少年本人は協調性を欠如し独善的傾向が強く反省力が乏しいことを認められる。そこで少年の処遇を如何にするのが妥当であるかについて考察するのに、右のような性格を有する少年が右のような生活態度によつてその悪性を露呈するに至つたのであるから罪を犯す虞があることは明らかであり、かかる少年に対しては強い矯正教育を実施する必要のあることは言を俟たないところであり、しかも右のような家庭環境においては、少年の保護監督と教育とをその家庭に期待することは全く不能であるといわなければならないから、少年を相当期間少年院に送致し厳格な規律の下に規則正しい生活をして社会生活に順応し得る習慣と心情とを涵養させる必要のあることは明らかである。従つて原決定が少年を中等少年院に送致したのはまことに相当であり、本件抗告は理由がない。

よつて、少年法第三十三条第一項に則り本件抗告を棄却することとし、主文のとおり決定する。

(裁判長判事 山田要治 判事 滝沢太助 判事 鈴木良一)

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